【アジア大会 8月18日開幕】

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【アジア大会 8月18日開幕】
《日本選手権(アジア大会最終選考会)第3日③》
男子円盤投日本新の湯上ら、最終日にアジア大会選考基準クリア選手が続出
北村と宇都宮は涙を流した前戦から立て直しての快勝

 最終日はアジア大会選考基準をクリアした選手が続出した。男子円盤投の湯上剛輝(トヨタ自動車)は62m16の日本新、女子800mの北村夢(エディオン)は2分02秒54と、ともにアジアメダル期待記録を突破。両種目とも前回の仁川大会で代表が派遣できなかったが、2大会ぶりのアジア大会代表派遣に前進した。女子200mの福島千里(セイコー)と、女子400m障害の宇都宮絵莉(長谷川体育施設)は大会前にアジアメダル期待記録を突破済み。日本選手権での優勝と合わせて代表入りが確実になった。男子3000m障害優勝の塩尻和也(順大4年)と、女子5000m2連勝の鍋島莉奈(JP日本郵政グループ)は、五輪スタンダード記録突破と合わせて代表に内定した。

 男子円盤投の日本記録は鮮烈だった。
 湯上は1投目に59m51の自己新をマークすると、2投目に60m29と日本人4人目の大台突破を果たし、日本歴代2位に進出。そして3投目に61m02と日本記録を28cm更新した。さらに4投目に62m03、5投目に62m16と3投連続日本新の離れ業を演じた(最終6投目はファウル)。
 日本記録よりも上に設定されていたアジアメダル期待記録(61m13)も突破した。
「すごくリラックスして投げられました。日本記録はずっと目標にしていたので、むちゃくちゃ嬉しいです。1投目に自己新が出て気持ち的に楽になり、その後の日本新につながりました。アジア大会はもちろん、メダルを目標に頑張ります」
 男子円盤投でのアジア大会メダル獲得は、1986年ソウル大会の前田裕孝の銀メダルが最後。それを考えるとハードルが高いが、62m16は今季アジアリスト2位。2017年のアジアリストでは5位相当だが、昨年は62m台に3人がひしめく混戦だった。
 派遣なしに終わる可能性もあった男子円盤投が、メダル争いが期待できる種目に急浮上した。

 女子800mの北村夢の後半の力強さにも、驚かされた。2分02秒54でアジアメダル期待記録(2分02秒63)を初めて突破し、代表入りに大きく近づいた。
 北村は昨年2分00秒92の日本歴代2位をマークしたが、今季は冬期の故障があったところに海外遠征が2つ続いた影響で、調子がなかなか上がらなかった。静岡国際では川田朱夏(東大阪大1年)にフィニッシュ前で逆転され、ゴールデングランプリでは外国人選手の急激な進路変更でバランスを大きく崩し、塩見綾乃(立命大1年)に先着された。
 2週間前にアジアメダル期待記録の突破を狙って日体大長距離競技会に出場したが、2分03秒39と届かず涙を流した。そこで突破して、日本選手権は勝負に集中するプランが崩れたのである。
 中期的な流れは良くないなかで立て直し、日本選手権で記録も勝負もしっかり結果を出したのは評価できた。
「記録を出せず、どうしたらいいかわからなくなった時期もありました。自分なりにスピードと持久力の練習を組み立てて、なんとか合わせられました。アジア大会がかかっていたので、記録突破と優勝を同時に達成する気持ちを強く持ち、挑戦者として日本選手権に挑みました」
 1周目は川田が前に出て1分0秒前後で通過。600m手前で北村が前に出て、そのまま押し切った。2周目を1分2秒で押し切る力は、北村の強さだろう。
 日本選手権の優勝タイムは今季アジア2位。自己記録の2分00秒92は、昨年のアジアリストでトップだった。中東からアフリカ出身の選手が出てきたり、インドやその周辺諸国からも突然快走する選手が現れたりするが、中国勢の力が近年落ちている。メダルも目標にできる種目である。

 女子400m障害で優勝した宇都宮絵莉も、前戦で涙を流していた。本職の七種競技で、優勝候補として臨んだ日本選手権混成(6月16~17日・長野)で4位と敗れたのである。アジアメダル期待記録も突破していたので2位に入れば可能性はあったが、苦手の砲丸投とやり投で大きく崩れた。やり投の3投目をファウルした後、スタンドのスタッフと話をしていると涙が頬を伝った。
 400m障害でもただ1人、アジアメダル期待記録の56秒98を木南記念で破っていた。七種競技失敗のメンタル的な落ち込みも心配されていたが、前回優勝の青木沙弥佳(東邦銀行)を10台目を越えてから逆転。スタンドに向かって何度も両手を突き上げた。
「(10台目を越えて)行けるとは思いませんでしたが、ここからやぞ、と言い聞かせました。七種競技が終わってすぐに気持ちは切り換えましたが、1週間は長かったかな。今日に向けて、七種の失敗を意味のある失敗にしようと思いました」
 元々は走幅跳が専門で、全日本中学選手権、インターハイと中高で日本一になった。大学で指導者から勧められ、しぶしぶ七種競技に転向したが、今は混成競技の魅力にハマっている。そして混成競技をやるうちに400m障害も強くなった(混成競技と400m障害を兼ねる選手は散見される)。
 才能を発掘する方法の1つとして、日本陸連も種目トランスファー(種目変更)を推奨している。宇都宮も複数種目に積極的にチャレンジすることで、数年前には考えもしなかった400m障害で初代表の座を手にした。
「今までのすべての経験を、レース前に思い出したら自分は行けると思うことができました。この競技場(維新みらいふスタジアム)は7年前の山口国体(少年A)走幅跳で優勝した場所でもあるんです。ここで自分の力を出すんだと、前向きな気持ちで臨むことができました」
 七種競技では昨年アジア選手権に出場しているが、400m障害では初めての国際大会となる。だがジャカルタでスタートラインに立つ宇都宮は、多くの経験に裏打ちされた落ち着きをもって立つこのではないか。山口の宇都宮を見て、そう確信できた。

TEXT by 寺田辰朗
写真提供 フォート・キシモト

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