【アジア大会 8月18日開幕 TBS】

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【アジア大会 8月18日開幕 TBS】
《2018アジアの陸上競技情勢③6月後半の好記録》
蘇炳添が9秒91、驚きのアジアタイを2レースで連発
サンバは世界歴代2位の46秒98!日本勢では金井、山﨑が今季アジア最高

 衝撃的なニュースがスペインから飛び込んできた。蘇炳添(中国)がワールドチャレンジミーティング・マドリード大会(6月22日)男子100mで、9秒91のアジアタイ記録をマークしたのだ。さらに6月30日のダイヤモンドリーグ・パリ大会では男子400m障害のA・サンバ(カタール)が46秒98、アジア新だけでなく世界歴代2位というすさまじい記録を樹立した。そしてパリ大会女子400mでもS・E・ナセル(バーレーン)が49秒55のアジア新記録を打ち立てた。
 日本勢では男子110mHで13秒36の日本新をマークした金井大旺(福井県スポ協)と、七種競技で5836点の日本歴代3位をマークした山﨑有紀(スズキ浜松AC)が、今季アジアリストで1位に立った。

 4年に一度のアジア大会が8月、インドネシアのジャカルタで開催される。東京五輪前最後の総合競技会として重要度も、注目度も大きい大会だ。陸上競技の日本勢はアジアで勝つこと、あるいはレベルの高いアジア勢を相手にしっかりと戦うことが、来年のドーハ世界陸上、2020年の東京五輪へとつながっていく。
 そのアジア大会を面白く観戦するために、国際陸連サイトの2018年アジアリストを参考に、今季の活躍が顕著なアジア選手をピックアップして紹介していく。

 蘇の9秒91が衝撃的だったのは、9秒99だった自己記録を一気に縮めて日本勢に差をつけたからだ。
 アジア記録の9秒91は、ナイジェリア出身のF・オグノデ(カタール)が持っていた。アジア出身選手では蘇が2015年に初めて10秒を破る9秒99で走り、桐生祥秀(日本生命)が昨年9秒98、謝震業(中国)が今年6月19日に9秒97と縮めていた。謝の9秒97だけでもビッグニュースだったのだが、世界陸上男子100mでアジア人唯一のファイナリストである蘇が、記録面でも実力をアピールした。
 蘇は6月30日のダイヤモンドリーグ・パリ大会でも再度、9秒91をマークした。蘇のダイヤモンドリーグの順位では、5月の上海大会とユージーン大会で2位と4位。パリ大会は9秒88の今季世界最高タイで優勝したR・ベーカー(米国)と0.03秒差の3位だった。
 9秒58の世界記録を持つウサイン・ボルト(ジャマイカ)が昨シーズンで引退し、歴代2位の9秒69で並ぶT・ゲイ(米国)とY・ブレイク(ジャマイカ)の2選手も、そしてJ・ガトリン(米国)ら9秒7台の選手も盛時のタイムを出せなくなっている。世界の100mは新旧交代の時期に差しかかっているのだ。
 五輪&世界陸上のメダルが期待できる9秒8台に、アジア出身選手が近づいている。

 世界レベルでいえば、サンバは蘇炳添以上になる。
 男子400m障害の46秒台は過去、1992年バルセロナ五輪でK・ヤング(米国)が出した46秒78の世界記録が1回あるだけである。47秒台前半は10人以上が出していたが、ヤング以外はだれも47秒の壁を超えられなかったのだ。
 46秒98の世界歴代2位を出したからには目標は世界記録しかなくなったわけだが、サンバは冷静に足元を見ている。
「世界記録に近づいているのは事実だけど、僕は速くなるためにやるべきことをワンステップずつやって成長していくだけだと思っているんだ。実際、去年と比べたら僕のテクニックは進歩していると思うけど、来年記録が良くなるかどうかは誰もわからない。(世界記録は)なんとも言えないかな」
 47秒台中盤をコンスタントに出す力はついているが、46秒台はコンディションに恵まれた部分も大きかった。世界記録よりも、今の力を確実なものにしていくことを優先する。

 女子400mのナセルのアジア新記録は、今のアジアを象徴している。
 女子トラック種目のアジア記録は、新種目の3000m障害と100m障害の2種目を除けば、すべて1990年代に中国選手が出したタイムだった。100mは10秒79、200mは22秒01、800mは1分55秒54、1500mは3分50秒46と、レベルの高い記録ばかりだ。
 そんな記録の1つをナセルが25年ぶりに更新したのである。ナセルはアフリカ・ナイジェリア生まれで、サンバもアフリカのモーリタニア出身。中東の産油国がトラック種目全般でアフリカ出身選手を帰化させての強化が成功している代表例だろう。一方の中国は男子短距離、男子跳躍、女子投てきに強化種目を絞ってきている。

 中国と中東諸国が強力な強化を進めるなか、他のアジア諸国は二極が手薄な種目で存在をアピールする。男子砲丸投とやり投ではインド選手が今季アジアリスト1位で、円盤投ではロンドン五輪銀メダルのE・ハダディ(イラン)がアジアに君臨し続けている。男子ハンマー投と女子走高跳、女子三段跳では旧ソ連の中央アジア諸国がリスト1位である。
 そんななか、開催国であるインドネシアの選手が頑張っているのが女子走幅跳。4年前の仁川大会優勝者のM・N・ロンダが今季アジアリストでも6m52で1位を占めている。

 そんなアジアの波に、日本選手も乗ろうと頑張っている。日本選手権男子110mHに13秒36の日本新で優勝した金井大旺(福井県スポ協)がその代表だ。谷川聡が2004年アテネ五輪で出した13秒39を、14年ぶりに更新した。A・M・ムアリード(サウジアラビア)が6月4日にプラハで出した今季アジア最高記録と並んだのである。
 同じように日本選手権で、日本記録を更新した男子円盤投の湯上剛輝(トヨタ自動車)の62m16は今季アジア2位。この種目ではハダディが突出した存在だが、それに次ぐポジションを日本選手が占めている。数年前には考えられなかったことだ。

 日本選手権は気象条件に恵まれない日もあったが、日本選手の底力が発揮された種目も多かった。金井の他には女子七種競技に5836点の日本歴代3位で優勝した山﨑有紀(スズキ浜松AC)も、P・ヘンブラム(インド)が4月の英連邦大会で出した5834点を2点上回る今季アジア最高だった。
 男子では3000m障害の塩尻和也(順大4年)の8分29秒14、棒高跳の山本聖途(トヨタ自動車)の5m70、女子では800mの北村夢(エディオン)の2分02秒54が今季アジア2位にランクインした。
 女子10000mの堀優花(パナソニック)の32分05秒52は今季アジア4位だったが、1~3位は全員日本人で、秋のマラソン出場のためアジア大会には出場しない。
 100mHの紫村仁美(東邦銀行)と青木益未(七十七銀行)の13秒17も今季アジア4位だが、リスト1位の中国選手は13秒08とタイム差は小さい。どちらの種目も金メダル争いに加わる可能性が十分ある。

TEXT by 寺田辰朗
写真提供:フォート・キシモト

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