【アジア大会 8月18日開幕 TBS】

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【アジア大会 8月18日開幕 TBS】
《日本選手権混成(アジア大会最終選考会)最終日》
右代、中村がベテランの意地と力でワンツー。アジア大会代表有力に
20歳の丸山が7752点の年齢別日本最高で3位。“右代超え”候補に

 学生2人が初日をリードし、いつもの日本選手権混成とは異なる展開となったが、最後はアジア大会前回メダル・コンビの右代啓祐(国士舘クラブ)と中村明彦(スズキ浜松AC)が1・2位を占め、8月インドネシア・ジャカルタ開催のアジア大会有力候補になった(正式内定は6月24日の日本陸連理事会)。3位に続いた丸山優真(日大2年)も7752点と学生歴代3位、年齢別日本最高記録をマークした。将来、右代の日本記録(8308点)に挑戦できる潜在能力を示した。

 来週(6月22~24日)山口県開催の本大会前に、長野市で16・17日の2日間で行われている日本選手権混成。今年はアジア大会最終選考会を兼ねて開催されている。
 スピード型で前半に得意種目の多い中村が初日をリードするのが当たり前になっていたが、今回は奥田啓祐(東海大4年)と丸山優真(日大2年)の学生コンビが1・2位で折り返した。「いつもと違う展開」(右代)にもベテランコンビは慌てず、パワー型の右代は得意種目の多い2日目で逆転に成功。7944点で3年ぶり7度目の優勝に返り咲いた。優勝回数は十種競技では最多タイである。

 右代の底力が現れたのは、2日目3種目目の棒高跳だった。「(本番試技前に行う)練習跳躍で右代さんは好調には見えなかった」と言う選手もいたし、4m80を2回失敗したときは、7900点に届かない可能性もあった。中村の出来次第では逆転劇が起こるかもしれなかった。
 しかし右代は4m80を3回目にクリアすると、4m90を1回目に、5m00の自己タイも3回目に成功。十種競技中では初の5m台で、単独種目出場時を含めても4年ぶりの大台だった。
「4m80の3本目は、2回目の失敗がポジティブに考えられたことが良かった。3本目で何としても跳ぶぞ、という意識ではなく、2本目にやったことを再現すれば良い、と考えられました。そこの成功でスイッチが入って4m90、5m00と一気に行けました」
 棒高跳終了時点で丸山を逆転してトップに立つと、続くやり投でも67m04と他を圧倒。円盤投、棒高跳に続き3種目連続で参加選手中1位を占め、最後の1500mも危なげなく逃げ切った。惜しくも8000点には届かなかったが、7944点(追い風参考記録)で宣言通りの逆転優勝を果たした。

 初日の結果で窮地に立たされていたのは中村の方だったが、「1500mの最後の1mまで逃げずに、あきらめずに戦っていきます」と初日終了後に宣言した通り、最終日は粘り強い戦いを見せた。
 最初の110m障害では丸山が種目別1位を占め、同じ組で走った中村は14秒20と全体2位でも丸山に引き離された(丸山と中村がハードリングをしている写真が110m障害)。だが、続く円盤投で37m39の自身セカンド記録、棒高跳では4m70と失敗したが、2日目4種目目のやり投で54m52の自己新をマーク。最終種目の1500mは中村が世界大会でも1位をとる種目で4分21秒16で2位以下を圧倒(中村が走っている写真が1500m)。丸山を逆転して7849点の2位で10種目を終えた。
 昨日のコラムで中村に、苦手の円盤投とやり投で連続自己新の予感がある、と書いたがそれに近い内容だった。2年前の日本選手権で8180点(日本歴代2位)を出したときの2日目は3902点。それに迫る3840点をマークしたのは、スピード型で2日目を不得意とする中村にしては大健闘だった。
 ベテランの意地だったのか、投てき種目のトレーニングの成果だったのか?
「両方ですね。冬期は脚の痛みもあって投てき種目の練習に時間を割きましたし、年齢とともにスピードが出にくくなっている面もあります。このタイミングで投てきを伸ばせないとやって行けなくなる」
 今年の日本選手権最終日は、2人のベテランの意地と底力が見られた一日だった。

 ベテランコンビに最後はやられたが、7種目目の円盤投までトップを維持した丸山も大健闘だった。7752点は大幅な自己新で前述のように学生歴代3位、20歳の日本最高記録である。
 丸山は昨秋の日本インカレ、今年5月の関東インカレと2大会連続で棒高跳が記録なし。関東インカレ後の2週間で、何度も血豆をつぶすほど棒高跳の練習を繰り返した。
 最初の高さの3m80を2度失敗してひやりとさせたが、3回目にクリアして雄叫びをあげると、4m20も2回目に跳んだ。4m40の2回目でマメをつぶしてポールが握れなくなったが、やり投では59m93の自己新。1500mで中村に逆転されたが、競技後には右代から「ケガをしない体を作るなど一歩一歩進化できれば、自分の日本記録を抜くことができる選手」と高く評価された。
 丸山は「今回は記録も順位も意識しません。とにかく10種目をやり切ること」と競技が終わるまで繰り返したが、終わってみると色々な思いが込み上げてきている様子だった。
「右代さんの棒高跳、中村さんの1500mと、ベテランの強さを肌で感じました。そんなに会話をしたわけではありませんが、日本記録保持者のオーラも感じました。それは本当に大切にしたい。ただ、終わってみれば右代さん1位、中村さん2位、そして僕が3位。結果を見たらやはり悔しいです。(右代から日本記録更新の可能性を指摘されたが)自分でも将来、日本の十種競技を背負うつもりでやっていきたい」
 日本の十種競技の新たな力を、しっかりと感じられた2日間になった。

 初日に学生コンビがリードをして見る側を驚愕させる展開になったが、終わってみれば右代、中村の代表を続けているコンビが1・2位を占めた。今大会のポスターも、右代と中村の2人の写真と「十種王者・中村明彦vs王座奪還・右代啓祐」のコピーが使われた。
「中村の2日目は我慢しながら強さを出していた。すごく頑張ったと思う。お互い口にこそ出しませんでしたが、あのポスターのようにワンツーで終わりたいと思っていました」
 6月25日の日本陸連理事会で右代がアジア大会代表に選ばれるのは確実で、前回2個の銅メダルを取っている種目で昨年も右代がアジア・リスト1位ということを考慮すれば、2人目の中村の代表入りも可能性が高い。
 前回金メダリストの右代は「2連覇」を目指す。
「今回は前半に取りこぼしがあったし、8000点に届かなかった悔しさもあります。一からやり直してアジア大会を2連覇し、2連覇することで東京五輪にもアピールしたい」

 前回銅メダリストの中村も「8000点と自己新を目指してやっていく」と言う。そこに向けて今回、学生2選手から学んだことがあるという。
「今回若手2人が楽しそうに競技をしていました。自分は最近、心から楽しんでいなかった気がします」
 日本選手権に勝っている年でも、記録や右代に勝つことで汲々(きゅうきゅう)としていた。国際大会では代表としての責任感からか、思い詰めた表情が多かった気がする。中村が今大会の学生2人のように笑顔で10種目ができたら、2大会連続で複数メダルの快挙が実現する。

 また、女子七種競技は最終種目の800m前に、山﨑有紀(スズキ浜松AC)とヘンプヒル恵(中大)が5点差の大接戦となったが、800mでも山﨑が先着して初優勝を飾った。5836点の日本歴代3位。投てきの強豪・九州共立大から代表を多数輩出しているスズキ浜松ACに加入して1年目。九州共立大のトレーニングでベースを上げ、昨年引退した女子やり投日本記録保持者の海老原有希さんのアドバイスも受けて(写真)初タイトルを得た。
 アジアメダル期待記録も破っている。25日の陸連理事会を経て代表に選ばれるだろう。
「今回の記録に満足せず、日本記録を目指したい。もしもアジア大会に選ばれたら、アジアの選手の力を感じながら戦えれば、と思っています」
 昨年のアジア選手権は5942点でインド選手が優勝し、ヘンプヒルが5883点で2位。山﨑が自己記録を更新することができれば、優勝争いに加わる可能性もある。

TEXT/photo by 寺田辰朗

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