【ゴールデングランプリ③】

9edb4993dc594f209c2f

【ゴールデングランプリ③】
日本勢は男子400m障害・安部と走高跳・戸邊が優勝
GGP優勝でアジア大会へ弾みをつけた選手たち

 ワールドチャレンジ種目での日本勢の優勝は男子400m障害の安部孝駿(デサントTC)と、走高跳の戸邊直人(つくばツインピークス)の2人(男子400m、4×100mリレー、三段跳はオープン種目)。ワールドチャレンジミーティングは世界レベルの選手が複数参加することが条件付けられている。日本選手がなかなか勝てないなか、2人の優勝は価値があった。男子やり投の鄭兆村(チャイニーズタイペイ)や女子やり投の劉詩穎(中国)などハイレベルの種目を制した選手たちも、アジア大会でさらなる活躍が期待できる。

 男子走高跳は予想通りの激戦になった。優勝した戸邊と2位の王宇(中国)は2m30の同記録(戸邊が1回目の試技で跳んだのに対し、王は2回目)、3位のB・スターク(豪州)が2m28、4位の衛藤昂(味の素AGF)が2m25と好勝負を展開した。
 勝敗を分けたのは、2m30まで戸邊が全ての高さを1回目に跳んだこと。走高跳と棒高跳は1つの高さに対し3回の試技が許されているが、同じ記録ならその高さを少ない回数で跳んだ選手の順位が上になる。戸邊は常に先手を取り、優位に試合を進めた。
「王もスタークも2m30を跳んでくるんじゃないかと予想していたので、勝つには1本目で跳ぶことが重要になります。イメージ通りに進められました」

 とはいえ、2m30の1回目は会心の跳躍ではなかった。
「(踏み切った瞬間は)今ひとつかなと思って着地後に見上げたら、バーが残っていてくれた。これで跳べちゃうんだ、と少し自信になりましたね」
 ヨーロッパで数試合をこなしてから6月の日本選手権に臨む。8月のアジア大会前に試合を使って「技術を固める」ことが狙いだ。
 アジアの走高跳は近年レベルが高く、五輪&世界陸上メダリストが3人もいる。昨年のロンドン世界陸上金のE・M・バルシム(カタール)と銅のM・E・D・ガザル(シリア)、そして2015年北京世界陸上銀の張国偉(中国)。それにGGP2位の王と4位の衛藤、5位(2m20)の禹相赫(韓国)らもメダルを狙ってくる。
 戸邊のGGPでの戦いは、それ以上に激戦となるアジア大会のシミュレーションだった。

 もう1人の優勝者、安部のタイムは48秒97と静岡国際の48秒68(自己記録)よりも落ちている。これは「7台目まで13歩に挑戦した」(安部)結果だった。
 静岡国際ではインターバルの歩数は6台目まで13歩。その後は14歩を2台、15歩を2台と昨年までと同じパターンの中で、走りのスピードやハードリング技術のアップで記録を縮めた。そのパターンをさらに突き詰めても記録短縮は可能だが、13歩の台数を伸ばすのも単純に有効な方法である。
 ところが7台目までの13歩は、日本選手ではほとんど聞いたことがないほどの難易度である。GGPの安部も7台目まで13歩で行くことはできたが、そこまでで力を使いすぎたため、14歩で行くはずだった9台目が15歩(か16歩)になってしまった。
「歩数が上手く行かず悔しいのですが、失敗したレースでも(自身3回目の)48秒台を出せたことは自信になります」

 安部の新たな試みは、アジア大会でのA・サンバ(カタール)との対戦も意識したものだった。サンバは昨年の世界陸上7位入賞者で、今季は47秒57でダイヤモンドリーグ・ドーハ大会(5月4日)に優勝した選手。22歳という年齢を考えると、為末大のライバルだったH・S・アル・ソマイリーの持つアジア記録(47秒53)を更新する可能性もある。
 だが為末が世界一の前半のスピードでソマイリーを攪乱したように、400m障害は戦術の占める割合が他のトラック種目よりも大きい。安部も気象状況や体調に応じていくつもの戦術がとれるようにしたいと考えている。
「海外でも48秒台前半を出せるようにしたい。13歩を7台目まで行く技術を確立させることもそうですし、雨や風の条件が悪いとき、海外で予想外のことが起こったときに14歩を併用して、臨機応変に対応できる力をつけたい」
 引き出しを増やしてサンバに挑戦するための、GGPでの7台目までの13歩だったのだ。

 上記2人に限らず、アジア大会へのステップにできた選手がGGPでは数人見られた。
 男子やり投ではアジア記録(91m36)保持者の鄭兆村(チャイニーズタイペイ)が、2位・劉啓臻(中国)、3位・黄士峰(チャイニーズタイペイ)、4位・新井涼平(スズキ浜松AC)と、アジア勢4人が79~81m台にひしめくなかを勝ちきった。記録だけでなく、勝負強さも見せた。
 女子100mでは前回アジア大会金メダルの韋永麗(中国)が11秒17(追い風参考)で、10秒台の記録を持つ米国選手やアジアのライバルである福島千里(セイコー)に対して圧勝に近い差をつけた。
 女子やり投は昨年のGGPで66m47の当時のアジア記録を投げた劉詩穎と、世界陸上で67m59とアジア記録を更新した呂会会の中国勢が対決。前週のダイヤモンドリーグ上海大会で圧勝した呂が優勢と思われたが、1投目に67m12と自身の大会記録を更新した劉が2m半の差をつけて2連勝した。
「自分のリズムに専念した」と言う韋と、「神様が見ていてくれた。去年も川崎で自己記録を出したので、日本は私にとって福のある場所」と話した劉。
 2人とも惨敗したダイヤモンドリーグ上海大会からどう立て直したのか、しっかりと把握できていればアジア大会にもつなげられる。

TEXT by 寺田辰朗
写真提供:フォート・キシモト

スポンサーリンク
レクタングル(大)
レクタングル(大)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク
レクタングル(大)