【セイコーGGP2019から世界陸上ドーハへ③】

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【セイコーGGP2019から世界陸上ドーハへ③】
TEXT by 寺田辰朗
母親の母国で200m自己タイのノーマン
「ドーハでは400mで金メダルを取りたい」

 母親が日本人のM・ノーマン(米国)が、男子200mに19秒84の大会新で圧勝した。今後、世界のロングスプリントを牽引する21歳のスプリンターはレース後の会見で、自身の走りを冷静に振り返るとともに、9月開幕の世界陸上ドーハ大会への意気込み、来年の東京五輪のこと、そして母親の母国で走ることの意味も、しっかりと答えていた。
 母親の母国でのレースをステップに、ノーマンがロングスプリントで世界を牽引していく。

●19秒84の自己タイに「満足している」
 ノーマンの走りは予想通り、2位以下を圧倒した。1つ外側のレーンの飯塚翔太(ミズノ)を50~60mあたりで追い抜くと、直線に入ったときにはC・ベルチャー(米国)を3~4mはリード。昨年のアジア大会銀メダルの楊俊瀚(チャイニーズタイペイ)が2番手に上がったが、フィニッシュでは8mほどの差をつけていた。
 19秒84は、99年にF・フレデリクス(ナミビア)が出した19秒87の大会記録を更新するタイム。ノーマンにとっては昨年6月に、ダイヤモンドリーグ・パリ大会で優勝したときに出した自己記録とタイである。
「シーズン最初の200mで、それも海外のレースということを考えたらタイムは満足できます。しかし改善すべき点は多くあります。すごく嬉しいというより、良かったな、という感じです」
 ノーマンの走りを後ろから見る形になった飯塚は、「めちゃ速いですね」とあきれ顔で話した。
「リズムが違います。脚の回転は速くないのに、動きの大きさと滑らかさで速く進んでいる。これまで見たことのないタイプです」
 ノーマンと飯塚は、間接的にではあるがつながりがある。ノーマンの母親の伸江さんは飯塚と同じ静岡県出身で、飯塚は伸江さんの高校時代の指導者にアドバイスを受けたことがある。飯塚は2010年の世界ジュニア(現U20世界陸上)200mの金メダリストだが、6年後の16年世界ジュニアの200mでノーマンが優勝した。
 ノーマンの走りに話を戻す。改善とは、具体的にどんなことを指すのだろうか。
「今日のレース運びは良かったと思いますが、インテンシティ(激しさ)が足りなかったと思います。もっとエネルギーを注ぎ込むような走りをしないといけません。アグレッシブさが足りなかった」
 飯塚の「大きさと滑らかさ」の印象は、インテンシティとアグレッシブさが不足していたことで、より強くなったのかもしれない。

●将来的にはロングスプリント2冠も
 ゴールデングランプリの前日、中国ではダイヤモンドリーグ上海大会が行われていた。上海大会の男子100mに9秒86の今季世界最高で優勝したノア・ライルズ(米国)は、ノーマンと同じ1997年生まれ。16年世界ジュニアではノーマンが200m、ライルズが100mの金メダリストだった。
 昨年のダイヤモンドリーグ・ローザンヌ大会200mは、ノーマンが自己記録を出した次のレースだったが、ライルズに敗れている。その点について質問すると「確かに彼とは、友情をもったライバルです」とノーマンも認めた。
「ライルズとはダイヤモンドリーグ・ローマ大会(6月6日)の200mで対戦するんです。これまで3回対戦して全部負けているので、次は勝ちたいと思っています。彼と対戦する前に、自分のレースを完成させたい」
 インテンシティ、アグレッシブという言葉を使ったのは、対ライルズを意識したレースを考えてのことだったのかもしれない。
 ノーマンは4月には、400mで43秒45の今季世界最高、世界歴代4位タイをマークした。今の状態で全米選手権を戦えば、2種目で世界陸上代表切符を取る可能性もあるが、「400mに絞って金メダルを取りたい」という。
「自分はまだ、プロ選手として歩み始めたばかりなので、初めての世界陸上は1種目にフォーカスした方が良いという判断です。400mは学生時代を通じて、自分の強さを発揮できる種目だと感じています。今後プロとして肉体的、精神的に充実したときは、200mと400mの2冠も考えます」
 会見でこう答えたノーマンだが、レース直後には「東京五輪は200mか400mの1種目にするか、2種目で出場するか、話すのは難しい」という言い方をした。今シーズンの内容次第では(ライルズに勝てるようになる等)、2種目での挑戦もあり得るということだろうか。
「今回初めて日本の競技場を走って、2020年に向けて良い経験を積めたと思います。食事も美味しいものがいっぱいあるとわかりましたから。この経験をもとに、東京五輪への準備をしていきます。私は米国代表となりますが、母の国の文化や遺産をリスペクトして来年も走りたい」
 大阪からドーハ経由で東京へ。
 ノーマンは陸上競技を通じて、日米の架け橋となれる存在なのかもしれない。

写真提供:フォート・キシモト

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