【世界リレー2019横浜前日】

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【世界リレー2019横浜前日】
TEXT/Photos by 寺田辰朗

男子4×100mリレーは地元で金メダルに挑戦!
多田・山縣・小池・桐生の新走順が組まれた理由とは?

 1走から多田修平(住友電工)、山縣亮太(セイコー)、小池祐貴(住友電工)、桐生祥秀(日本生命)の新走順が発表された。5月11・12日に行われる世界リレー2019横浜の前日、メダルの期待がかかる男子4×100 mリレーの走順が明らかになった。
 世界リレーは2年に一度、国際陸連が主催するリレー種目だけの世界大会。男女の4×100mリレーと4×400mリレーは、五輪&世界陸上の上位常連国が参加。世界トップのスピード感あふれる走りと、芸術的なバトンパスが堪能できる。上記4種目は今大会の上位10カ国に、男女混合4×400mリレーは上位12カ国に、今年9月開幕の世界陸上ドーハへの出場権が与えられる。
 五輪種目以外では男女の4×200mリレーが行われていたが、今大会から男女混合の2×2×400mリレー、シャトルハードルリレーの2種目が実施される。
 国際陸連のセバスチャン・コー会長は、「新たなイノベーション作っていきたい」と強調した。若い世代のファン獲得などを目的に、アスリートやファン、スポンサー、メディアなど、色々な立場の声を取り入れ、新たなエネルギーを生み出していく。そのための大会が世界リレーだ。

●「勝負がかかったところで桐生の良さが生きる」(土江コーチ)
 銀メダルの16年リオ五輪と、銅メダルの17年世界陸上ロンドンで2走だった飯塚翔太(ミズノ)が、4月に盲腸を手術した。リオ五輪と金メダルの18年アジア大会で4走を務めたケンブリッジ飛鳥(Nike)は、左太腿の故障で戦列を離れざるを得なかった。
 明日の予選は2走に山縣を、4走には桐生を起用する(アクシデントがなければ明後日の決勝も同じメンバー)。リオ五輪時のデータでは、山縣は1走で、桐生は3走で世界一の区間タイムで走った。そのポジションを日本チームは変更してきたのだ。
 走順決定の理由を、土江寛裕五輪強化コーチは次のように話した。
「桐生は元々4走に適した選手なんですが、3走ができる選手が他にいなかった。そこに去年、カーブが走れてバトンパスもできる小池君が出てきた。1走の山縣君は日本の武器なので悩みましたが、多田君がメンバーに入るとしたら1走が一番適任です。山縣君はスタートからの立ち上がりも速いですけど、スピード持久力も高い選手です。いつも1→2走で飯塚君が引っ張れる(速いバトンパスができる)のは、山縣君の最後のスピードが高いから。今大会でも3走の小池君のスピードを引き出せると思います。小池君も(昨年5月の)ゴールデングランプリで日本Bチームの3走を走り、桐生と遜色ない走りをしてくれました」
 多田も17年世界陸上で1走を務め、銅メダル獲得に貢献した。昨年は主に加速局面で地面を押す動きを強調した結果、動きを崩してしまったが、今季は接地時間の短い17年の走りに戻っている。1年間苦しんだ分、単に元の走り方に戻るのではなく、元の走りにプラスした“気づき”を持つことが多い。
 新メンバーでもメダルラインの37秒台は確実に出せるし、どの選手にプラスアルファが出るかわからない。土江コーチは桐生を、パーソナルコーチとしても5年間指導してきた。日本人唯一の9秒台(9秒98)を持つ桐生の、リレーでの特性を2点挙げた。
「カーブを曲がることもできますが、桐生は直線の爆発力がすごい。世界ジュニア(14年大会。現U20世界陸上)やインカレでは走っていますが、本人が好きなのは勝負する4走。3走までの走順は、段差がついた状況でレースが進んでいます。横一線になって、走っていて勝敗がわかる4走が、桐生に向いている」
 リオ五輪ではケンブリッジが、ウサイン・ボルト(ジャマイカ)には後半で引き離されたが、バトンが接触する接戦を演じ、米国などの強豪チームに先着した。今大会の米国は9秒8台の選手が4走に起用されそうだ。ジャマイカやカナダも、9秒9台の選手が来るかもしれない。
 そのメンバーの中で桐生が互角以上の走りをすれば、今後の個人種目でも9秒9台前半が期待できるようになる。

●地元世界大会をどう活用するか
 来年の東京五輪で金メダルを目指す男子4×100 mリレーにとって、今大会の意味は大きく3つある。
 1つは東京五輪と同様に、地元開催の世界大会で経験を積むこと。
 五輪本番とは比べられないが、地元の声援の中を走る。地元特有のプレッシャーもかかるだろう。その経験は多少なりともシミュレーションになるが、本気で勝ちに行かなければシミュレーションにならない。土江コーチは今大会の目標は金メダルだと明言している。
 山縣は大会前日の会見では「まずは37秒台を出してしっかり表彰台を狙って行く」と話したが、「東京五輪で金メダルを目指しているので、世界リレーでも勝っておきたい」と以前に話していた。
 2つめは記録においても、東京五輪の代表入りを確実にすること。
 今秋の世界陸上ドーハ大会で8位以内に入れば東京五輪出場権を得られるが、もしも世界陸上で8位以内に入れなかった場合、今年の5月1日以降の国際大会で出した記録で上から8カ国が選ばれる(合計16カ国が出場)。今大会や来週のゴールデングランプリ、7月に出場予定のダイヤモンドリーグ・ロンドン大会などで37秒台を出しておけば、東京五輪出場を確実にできる。
 3つめは、色々な走順を試すことで、チームとしての経験値を上げられる。北京五輪銀メダルのように、メンバーと走順を固定して戦うことで熟練したリレーができるが、1人の選手が2つ以上の走順をできるようにしておくことでも、チーム力の向上が期待できる。
 土江コーチの説明には説得力があった。
「例えば1走しかできない選手だと、もう1人1走に強い選手が現れると、メンバーを外れるしかなくなります。そういうときに、別の走順でも実績があれば、4人のメンバーから外れなくてすむ。周りの人間も信頼できる」
 今後の世界陸上や五輪に臨むとき、仮にメンバーの1人が故障をして、その走順が経験のない選手が入るとチーム全体にも不安が生じやすい。いくつもの選択肢を持って臨めば、故障者が出ても余裕を持って臨むことができる。
 新しい走順を試す世界リレー横浜は、世界陸上ドーハと東京五輪を目指す日本チームにとって、極めて大きな意味がある大会なのだ。

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