【世界リレー2019横浜最終日】

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【世界リレー2019横浜最終日】
TEXT by 寺田辰朗

男子4×400mリレーがアテネ五輪以来の4位入賞
多くの種目で世界陸上ドーハへの期待度を上げた世界リレー

 大会最終日(2日目)は7種目の決勝が行われ、男子4×100 mリレーはブラジル、女子4×100 mリレーは米国、男子4×400mリレーはトリニダードトバゴ、女子4×400mリレーはポーランドが優勝。ダークホース的な存在だったブラジルやポーランドが接戦を制し、9月開幕の世界陸上ドーハの戦いが熾烈となることを予感させた。
 日本は男子4×400mリレーと女子4×200mリレーで4位に入賞。女子4×200mリレーは五輪&世界陸上種目ではないためレース機会が少ないが、1分34秒57の日本新記録という健闘だった。
 男子4×400mリレーと、前日の予選で全体11位に入った男女混合4×400mリレーの2種目で、日本は世界陸上ドーハ出場権を獲得した。
 B決勝に出場した女子4×400mリレーは7位で、上位2カ国に与えられる世界陸上出場権は獲得できなかった。男女4×100 mリレーも含め、今大会で出場権を獲得できなかった3種目は記録での世界陸上出場を狙うことになる。2018年3月7日~2019年9月6日までの期間に国際大会で出したタイムで、世界リレーで出場権を獲得した国を除いた上位6カ国に入ることが条件だ。

●世界トップの戦いに加わった日本
 男子4×400mリレーメンバーの4人が、3万人余の観衆の前で世界と戦う姿を見せてくれた。
 作戦としては金メダルのアジア選手権、2組1位通過した今大会予選と同じ“先行策”。世界大会の決勝で実際に先行することはできないが、1走にエースのウォルシュ・ジュリアン(富士通。45秒35=400m自己記録。以下同)を起用し、できる限り上位の流れに乗ってレースを進める戦術だった。
 ウォルシュは最後で米国のネイサン・ストロザー(400m自己記録は44秒34。日本記録は44秒78)に引き離されたが、2~4番手で2走にバトンパス。ラップは46秒1(筆者の手動計時。以下同)と予選の45秒4よりも落としたが、決勝のメンバーの中での順位を見れば、役割はしっかりと果たした。
「(自己記録が1秒違う)米国の選手はやはり強いと思いました」
 2走は予選では井本佳伸(東海大。45秒82)が走ったが、アキレス腱に不安があったため、予選では3走だった佐藤拳太郎(富士通。45秒58)に代わった。
 2走はジャマイカとトリニダードトバゴがスタートから一気にギアを上げ、オープンレーンとなる100m地点ではトリニダードトバゴ、米国、ジャマイカの順。佐藤は4番手だったが、黒人3選手に引き離されずに前半を走った。200mを20秒7で通過したことで、上位の流れに乗ることができた。
 後半で3チームには少し離され、5位のベルギーに迫られたが、4位を確保して3走にバトンリレーした。ラップは45秒4。
「前の選手になんとか追いつこうとしたのですが、世界との距離は僕個人にとってはまだ遠い位置にあると感じました。この距離を縮めていければ、日本チームのメダルも見えてくると思います」
 日本の3走は前日、混合4×400mリレーの4走で世界陸上出場権を取った北谷直輝(東海大。45秒98)。ベルギーは昨年のヨーロッパ選手権400m3位のジョナサン・ボルリー(44秒43)だったが、北谷は4位をキープして4走につないだ。ラップは45秒7。
「前半ついて最後で抜こうと思いましたが、世界のスピード感が圧倒的に違いました。自分の後半の弱さも出てしまいました」
 4走は予選に続いて若林康太(駿河台大。45秒81)が任された。前半で、並走するトリニダードトバゴとジャマイカの背中を積極的に追った。200m通過は20秒8と飛ばしたが、後半はペースダウンして残り60m付近でベルギーのヨナサン・サコール(45秒03)に抜かれてしまった。若林のラップは46秒0。
「前半もっと積極的に行って、距離を詰めなければいけませんでした。そこが上手く走れなかったので、最後に差されてしまったのだと思います」
 日本は3分03秒24と予選(3分02秒55)よりタイムを落とした。気象条件の違い(気温が3℃低かった)も影響していたかもしれない。しかしフィニッシュ後に米国が失格し、日本は4位に繰り上がった。
 決勝進出が2004年アテネ五輪以来なら、4位入賞もアテネ五輪と並び、五輪&世界陸上&世界リレーでは過去最高成績だった。

●佐藤の語る4×400mリレーチームの成長
 “先行策”を成立させているウォルシュの存在が一番大きいが、今大会では2走の井本(予選)、佐藤(決勝)の走りも日本の戦い方に大きく貢献した。
 土江寛裕五輪強化コーチは近年の4×400mリレーが予選を通過できなかったのは、“前半”に課題があったと分析した。個人の走りでも前半で外国勢のスピードに置いていかれ、チームとしても1・2走で置いて行かれる。個人なら後半で追い上げて、400mトータルでタイムを上げれば前半を無理しなくてもいいはずだが、差を開けられると走りに硬さや力みが出て追い上げられない。
 ナショナルチームは昨年から就任した山村貴彦コーチ(シドニー五輪代表。45秒03)の指導のもと、厳しいメニューにも取り組んできた。
 佐藤は「以前はスピードはスピード、持久力は持久力と分けて練習してきましたが、今は距離をやりながらさらに、スピードも出すメニューを行っています」と説明する。
 井本は200mのスピードがあるタイプで、予選で見せたように最初からギアを上げられる。
 それに対して佐藤は200mの自己記録が21秒19だが、昨年から前半の強化に取り組んできた(故障を克服したことも大きい)。その結果今大会では、前半の200mを20秒7と自身の最速タイムで通過して、世界トップの流れに乗ることができた。
 ウォルシュの存在についても、佐藤は次のように話す。
「ウォルシュが前で来てくれるので、前に前にという位置でレースを進められて、結果として記録も伸びてきました。1走で後れると巻き返すのが大変ですから、ウォルシュの1走はチームとして走りやすい」
 今大会の各国のエントリー選手の顔ぶれは、ベストメンバーではない国もある。ボルリーのように、明らかにベストコンディションでなかった選手もいた。世界陸上でも同じように入賞ができると、簡単には言い切れない。
 だが日本も、チームの戦略に選手たちが応え始めている。リオ五輪4×400mリレー代表だった田村朋也(住友電工)は、今大会は4×200mリレーに回ったが典型的な前半型の選手。「僕のスピードを生かして、4×400mリレーをもっと盛り上げたい」と意欲を見せた。
 エースのウォルシュが「4位は悔しい思いもありますが、これまでの4×400mリレーの状況からすれば、進歩を感じられました。そこは良かったと思う」と、チームの成長に言及した。
 今大会初日に1万4766人、最終日には3万134人の観客が日産スタジアムに足を運んだ。リレー種目はやはり、見ていて盛り上がりやすい種目なのだ。そして男子4×400mリレーは世界陸上ドーハでも、ワクワク、ドキドキしながら見られる種目になった。

写真提供:フォート・キシモト

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