【布勢スプリント2018】

f37c153b4ddfdd2b95f7

【布勢スプリント2018】
山縣が日本選手権前哨戦で快勝。9秒台への期待がより膨らんだ向かい風0.7mでの10秒12。7位の多田は立て直しが急務

 6月3日の布勢スプリント男子100mは山縣亮太(セイコー)、飯塚翔太(ミズノ)、ケンブリッジ飛鳥(Nike)のリオ五輪4×100mリレー銀メダルトリオに、多田修平(関学大)が加わった豪華メンバーで争われた。記録が出やすいことで知られるコカ・コーラ ボトラーズジャパンスポーツパーク(鳥取県立布勢総合運動公園)陸上競技場だが、男子100 m決勝はあいにくの向かい風(0.7m)。その中で10秒12の今季日本最高は、山縣にも9秒台の力があることを示していた。

 日本選手権(6月22~24日)前哨戦は山縣の完勝だった。
 3歩目くらいでバランスを崩したが、すぐにリードを奪い、後半に強い飯塚とケンブリッジを寄せ付けず逃げ切った。山縣の優勝タイムは10秒12、2位の飯塚が10秒21、3位のケンブリッジも10秒21。山縣が前日会見で目標に掲げた10秒0台には届かなかったが、向かい風0.7mだったことを考えればその価値は十分にあった。

 山縣は課題としていた自身のスタートに合格点を出した。
「ゴールデングランプリ(5月20日)から重心の位置をすごく意識してやって来ましたが、今日の予選ではまだ後ろでした。決勝はカクンとバランスを崩しましたが、重心が前にあるときにたまに起きることです。ピストルが鳴った直後の景色も、予選とは違いました」
 視界のほんの一瞬のことだが、今季のこれまでのレースより前に出ている景色だったという。

 タイムも客観的に見れば、無風なら10秒0台は出ていたし、公認許容範囲の2.0mに近い追い風なら、9秒台が出ていた可能性もある。だが山縣としては、そういった机上の換算に簡単に首肯できない部分もある。
「向かい風0.7mのなかでの10秒12は評価して良いと思います。ただ、実際に2m近い追い風の時でも9秒台は出せていません。地面のとらえ方も、向かい風だからプラスに働くこともあり得ます」
 ここは山縣の感覚を尊重すべきで、布勢の走りに9秒台の価値があったと断定することは避けたい。ただ、桐生祥秀(日本生命)に続く9秒台への期待が、より大きくなったのは確かである。

 もう1つの課題だった中盤にかけての加速局面は、まだ合格点は出すことができなかった。そこが日本選手権までにクリアできれば、我々が期待する以上のタイムが出る可能性もある。

 2位の飯塚は今季、故障で出遅れていた。それがケンブリッジを抑えての2位。日本選手権は専門の200mに絞ることになりそうだが、「今までにない手応えがあります。日本選手権はベスト(20秒11=日本歴代2位)を切るつもりで行きます」と、かなりの好感触を得た。
 3位のケンブリッジは決勝よりも「予選の方が流れは良かった」と言う。予選は追い風0.9mのなかでの10秒12で、決勝の向かい風0.7mとは違ったが、山縣と同じ今季日本最高記録である。「ここから3週間でまだまだ上がる」と、こちらも手応え十分の様子。
 日本選手権は桐生も加わり、アジア大会代表2枠を争う。

 不安を残したのが多田である。10秒40の7位でいつもの笑顔が見られなかった。
「スタートから中盤の加速が(昨年と比べて)いっさいありません。そこで勝負するタイプなのに、今は武器がまったくない状態。バネがないと感じているので、日本選手権までにその部分を鍛えて行きます」

 日本選手権に向けて山縣の記録への期待が大きくなり、多田がここからどう立て直してくるかという焦点も明確になった。9秒台や10秒0台は出なかったが、日本選手権前哨戦としての面白さがいくつも見られた布勢スプリントだった。

TEXT/photo by 寺田辰朗

スポンサーリンク
レクタングル(大)
レクタングル(大)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク
レクタングル(大)