【布勢スプリント2018前日】

f3fafb1c690e666eba65

【布勢スプリント2018前日】
自身10回目の10秒0台を目標に掲げた山縣。走りの技術に集中することがタイムにも勝負にも、そしてアジア大会にもつながる重要レース

 記録が出やすいことで有名な布勢スプリントに、日本人2人目の9秒台も期待される山縣亮太(セイコー)、ケンブリッジ飛鳥(Nike)、多田修平(関学大)の3人が出場する。前日(6月2日)に会見した3人の様子から、記録への意欲、勝負に対する強い気持ち、そして自身の走りの課題が明らかになった。

 昨年9秒98を出した桐生祥秀(日本生命)に続く9秒台も期待してしまうが、大会前日の山縣はいつものように冷静に(しかし表情は笑顔で)語った。
「今年はまだシーズンベストが10秒13で、10秒0台を出していません。10秒0台を目標に、しっかりと今のベストの走りを出すことを考えています」
 10秒13を出したゴールデングランプリ(GGP)は向かい風0.7mで、昨年の世界陸上金メダルのジャスティン・ガトリン(米国)とは0.07秒差。風は追い風2.0mまでが公認される。条件が良ければ9秒台も…というニュアンスで話を振られると、「そこは神様が決めること」と、9秒という言葉を出すのは控えた。
 山縣は昨年、日本歴代2位タイの10秒00を出してから、9秒8台を目標タイムとして掲げ始めた。明日も9秒台を狙っていないわけではないのだが、走りを冷静にコントロールするために、前日に9秒という言葉を使うのを避けたのだろう。

 大会会場のコカ・コーラ ボトラーズジャパンスポーツパーク(鳥取県立布勢総合運動公園)陸上競技場は、記録が出やすい競技場として知られている。トラックは反発の強い材質で、風までコントロールできる。第4コーナー(100mスタート地点)の後方に巨大な“防風シャッター”(写真参照)が設置され、それを開閉することで風の強さを調整できる。
 一昨年の今大会で山縣が10秒06、桐生が10秒09を出し、同一レースで2人が10秒10未満で走った史上初めてのレースとなった。昨年9月の日本インカレ(福井)で桐生が9秒98と歴史的な快挙を成し遂げたが、同じレースで多田が10秒07で走った。同一レースの複数10秒10未満は、この2レースしかない。
 2年前の山縣の10秒06は、2012年ロンドン五輪予選でマークした10秒07を4年ぶりに更新したタイム。相性の良さを感じているのは間違いない。

 前日会見の山縣からは記録よりも走りの中身、技術に集中する様子がうかがえた。
「今季は10秒00のときほど中盤の伸びを感じられていません。10秒00のレースは楽にスピードが上がっていったのですが、今年は頑張らないと上がってくれない。良いときはスタートから綺麗にスピードが上がっていくので、スタートが変われば中盤以降の伸びも変わってくる。ビデオを見返すと上体の起き上がりが早いので、そこを抑えるようにしたいと考えています」
 タイムや勝敗よりも走りの中身、つまり自分がやるべきことに集中する。もちろんレース中に、ライバルと競り合うことで予想以上の力が発揮されることもある。だが山縣は、冷静に走りをコントロールするタイプのスプリンターである。

 ライバルたちとの戦いや、勝敗に対して醒めているわけではない。特に今年は、8月にアジア大会が行われる。
「アジア大会の枠は2つしかありません。国内にも手強いライバルが多いのですが、負けるわけにはいきません」
 アジア大会の代表人数は各種目2人までで、五輪&世界陸上の3人よりも少ない。有力選手が多数いる種目にとっては最重要選考会の日本選手権が、例年以上の激しい戦いになる。3週間前の今大会で勝っておけば、本番での戦いを有利に進めることができるのだ。

 明日の山縣は自身の走り、技術に集中する。記録が出やすい大会ということを考えれば、結果的に本人が目標とする10秒0台が出る可能性はかなり高い。明日は予選・決勝と2本が行われるが、2本とも10秒0台なら山縣の10秒10未満のレース数は11回となり、桐生とまったく同じ回数になる(山縣自身は、回数は気にしていないと思われるが)。
 そして記録を出せばライバルたちに先着し、アジア大会代表選考で優位に立てる。記録への期待が高い布勢スプリントは、日本選手権やアジア大会にもつながっていく大会である。

■ケンブリッジ飛鳥コメント
「明日は自分の持ち味である後半に注目してほしいと思っています。2人とも前半が速いのですが、(多少差をつけられても)自分の走りを信じて貫けば、ラスト勝負に持ち込める。勝ちにもタイムにもこだわりたい。タイムはまずは10秒0台の自己新(自己記録は10秒08)ですが、もちろん9秒台も狙っていきます」

■多田修平コメント
「GGPでスタートから中盤のストライドが短くなっていて、バネが足りないとわかりました。2週間、ジャンプ系のトレーニングを多く取り入れてやってきました。スタートから中盤のキレを取り戻して、後半は粘りの走りをしたい。今季はまだ10秒2台しか走っていないので10秒1台は必ず出して、自己記録(10秒07)に近いタイムも出したい」

TEXT/Photo by 寺田辰朗

#アジア大会 は8月ジャカルタ
#東京五輪 前 最後の総合競技会
#TBS 系列生中継

スポンサーリンク
レクタングル(大)
レクタングル(大)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク
レクタングル(大)