【日本選手権2日目②】Text by 寺田辰朗

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【日本選手権2日目②】Text by 寺田辰朗
 小雨が断続的に降りしきるあいにくのコンディションとなったが、15種目の決勝が行われ、以下の7種目で8人のリオ五輪代表が内定した。

<男子>
100m:優勝・ケンブリッジ飛鳥=標準記録&優勝
  〃 :3位・桐生祥秀=派遣設定記録&入賞最上位
400m:優勝・ウォルシュ・ジュリアン=標準記録&優勝
400m障害:優勝・野澤啓佑=派遣設定記録&入賞最上位
やり投:優勝・新井涼平=派遣設定記録&入賞最上位
<女子>
100m:優勝・福島千里=標準記録&優勝
3000m障害:高見澤安珠=標準記録&優勝
やり投:2位・海老原有希=派遣設定記録&入賞最上位

 派遣設定記録突破者が優勝してリオ五輪代表を決めたのが、男子400mHの野澤啓佑(ミズノ)と男子やり投の新井涼平(スズキ浜松AC)の2人。女子100mの福島千里(北海道ハイテクAC)は標準記録突破と優勝だが、今の日本で突出した存在の選手がきっちり代表入りを決めたという点で、似たような状況の3種目だったといえるだろう。
 それに対して男子400mのウォルシュ・ジュリアン(東洋大)と女子3000m障害の高見澤安珠(松山大)は、日本選手権が初の標準記録突破だった。フィニッシュと同時に歓喜の代表入りを実現させた。

 リオ五輪入賞候補の新井が84m54と雨の中でも大会記録を更新。今季は安定感を欠いていた新井の5投目は、日本の陸上界にとっても大きな意味を持ちそうだ。
 派遣設定記録を突破しているため8位以内で代表入りが確実な状況だったが、新井本人は「“波”のあるシーズンだったので、日本選手権で低いところが来たら8位を逃す可能性もあった」と、ホッとした表情も見せた。

 シーズン初戦の織田記念は78m07(6位)と低調な出だし。前日の取材には「今季の目標は90m」と話していただけに、日本人のなかでも4番手という成績は本人が一番不安を持ったはずだ。だが、2戦目のゴールデングランプリ川崎では84m41(2位)と6mも記録を伸ばし、周囲にも自身にも“大丈夫だ”と感じさせた。
 ところが、である。5月のダイヤモンドリーグ上海大会で80m07(6位)、6月のオスロ大会では76m82(9位)まで記録を下げた。特にオスロ大会後は「体は動いていましたが、技術がダメダメでした。全力では動けていてもなぜ飛ばないのか、何が悪いのかわからない感じです」と、原因不明であることを自身のTwitterに投稿していた。
 それが1週間後のストックホルム大会で82m24と持ち直し、過去の世界陸上金メダリストにも勝った(4位)。そこから8日後の日本選手権で84m54と、シーズンベストを上回ったのである。

 今季の“波”の低さは何だったのだろう?
「ラストクロス(助走の最後の局面)で右脚が地面に着いた瞬間に、左脚の出方が後れていました。単純にパワーポジション(投げの姿勢)に上手く持って行けなかったということです」
 室伏広治が一線から退いた今、男子やり投が最も世界に近い投てき種目になった。“助走をする唯一の投てき種目”という点で、工夫をする余地が多くある。それが日本人でも戦うことができている理由だと、投てき関係者が説明してくれた(ハンマー投も4回転のターンの中で工夫できる)。
 大きくいえば助走距離が長い選手、助走スピードが速い選手ほど、正確に行うことができればやりは遠くに飛ぶが、逆に少しでも狂うと記録が大きく下がる。安定性を重視するなら、助走距離やスピードは抑えめにした方がいい。

 新井は“ゴリラ”と言われるほどのパワーの持ち主だが、先輩の村上幸史(スズキ浜松AC)ほど筋力は強くないし、外国トップ選手と比べても劣る。目指す技術ができて初めて、世界のトップと戦うことができるのだ。
 新井は「単純に」と言ったが、やり投のパワーポジションに持って行くには数多くの要素をすべて正確に行う必要がある。基本を忘れないように、という意味を自身に言い聞かせる意味で、「単純に」という言葉になったとのだろう。

 新井は初戦の織田記念で、高校の同級生だった美奈(みな)さんとの結婚も公にするつもりだったが、“波”が低い結果だったためチャンスを逸してしまった。日本選手権優勝後に晴れて報道陣に向けて公表した。
「年始めに結婚しました。(美奈に)サポートしてもらって、この記録が出せたと思っています。今の目標はもちろん、90mとメダルです」
 シーズン初戦で言う予定だった内容を、堂々とコメントした。

写真提供:フォートキシモト

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