【MGCシリーズ・びわ湖マラソン2019】

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【MGCシリーズ・びわ湖マラソン2019】
TEXT by 寺田辰朗

山本憲二が悪条件のなか2時間08分42秒の自己新でMGC本番へ手応え
山本浩之と河合が新たにMGC出場資格を獲得

 MGCシリーズの男子最終戦、びわ湖マラソンが3月10日、滋賀県大津市の皇子山陸上競技場を発着点とする42.195kmのコースで行われた。スタート時から小雨が降り続いたが、前週の東京マラソンほど強くはなく、防寒アイテムを途中で外した選手もいた。ただ、レース終盤には雨足が強まり、体が冷えた選手も多かったという。
 悪条件のなかでもアフリカ勢が強さを見せ、2時間07分52秒で優勝したS・ブナスル(モロッコ)以下6位までを独占した。
 日本勢では2時間08分42秒で7位の山本憲二(マツダ)が、昨年の東京マラソンに続いての2時間8分台で、安定した強さを見せた。MGC(マラソングランドチャンピオンシップ。東京五輪とほぼ同じコースで9月に開催され、五輪代表が最低でも2人は決定する)本番への手応えを得たようだった。
 山本憲二と日本人2位の川内優輝(埼玉県庁)は、昨年中にMGC出場権を獲得していたが、今大会では新たに2人がMGC出場資格を獲得した。2時間10分33秒で10位の山本浩之(コニカミノルタ)と、2時間10分50秒で11位の河合代二(トーエネック)で、男子のMGC出場権獲得選手は合計30人になった。

●30km以降で勝負を仕掛けた山本憲二
 山本憲二が仕掛けたのは31km手前だった。
 ペースメーカーが外れ、D・ロビ(エチオピア)がペースを上げたが、間もなく「前に出ろ」と手で合図をされた。山本は「マラソンで一度も先頭に出たことがなかったので、仕掛けてみたかった」(選手コメントは日本陸連Twitterから転載。以下同)と、その誘いに乗った。
 だがアフリカ勢を振り切ることはできず、先頭集団はアフリカ勢6人と山本の7人の集団に。32km過ぎには河合も追いついて来たが、河合の健闘も36km付近まで。残り5km地点では先頭から7秒後れていたという。
 自分以外はアフリカ勢という状況で、山本憲二は2度目のスパートを38km過ぎ仕掛けた。しかしアフリカ勢に逆襲され、39km過ぎには後れ始めてしまう。フィニッシュでは2時間08分42秒の7位だった。
「世界との差を感じたのでしっかり練習したい。日本人トップが取れたのはMGCで自信になる」とレースを振り返った。
 前日会見の記事でも紹介したように、ペース変化に対応するために、3km(1km3分切り)+3km(3分30秒前後)を4~5回繰り返す変化走なども、練習に取り入れてきた。
 マツダの増田陽一監督は、山本の走りを次のように振り返った。
「30km以降でレースを動かすための練習をしてきましたし、本人がやりたいと考えて来たことだったので、チャレンジしたのだと思います。それを外国人選手を相手にできたので、本人も手応えを感じていたようでした。清々しい表情をしていましたね。次は日本人選手を相手に、今回の経験を発揮する段階です」
 昨年の東京マラソン(2時間08分48秒・9位)に続く2時間8分台だが、昨年の東京は気象条件にも恵まれて好記録が続出したレース。それに対して今年のびわ湖は雨で、終盤はかなり体感温度が下がっていたという。
 陸連の坂口泰五輪強化コーチも山本の走りを高く評価した。
「東京よりも2ランク力が上がっています。東京はついて行くだけの走りでしたが、びわ湖はレースをコントロールする目的で出場して、それをきっちり実行しました。気候が良ければ2時間7分台が出ていたかもしれません」
 山本憲二がMGC本番でも、優勝争いに加わる可能性を示したレースになった。

●スピードのトーエネックからMGC獲得者
 39.5km付近で川内に抜かれるまで、日本人2位を走った河合が存在をアピールした。その後山本浩之にも抜かれて日本人4位に落ちたが、上位2人がすでにMGC出場資格を持っていたため、日本人3位以内で2時間11分00秒以内の要件を満たし、MGC出場資格を得た。
「MGCを念頭に走った。とても嬉しい。タイムを見る余裕はなくて最後に山本選手に抜かれたときはどうなるかと思った。まだまだ力不足なのでこれからトレーニングに精進していく」
 トーエネックの松浦忠明監督はスピード主体のトレーニングで、トラックで幾人ものトップ選手を育ててきた。昨年の日本選手権5000mでは服部弾馬が優勝し、中川智春が6位に入賞。服部は東洋大時代からインカレや学生駅伝で活躍していたが、中川は大学までは無名選手だった。
 河合も麗澤大時代の10000m自己記録は29分17秒35で、コアな駅伝ファン以外には知られていなかった。27分台で走っていた同学年の大迫傑(ナイキオレゴンプロジェクト)や設楽悠太(Honda)とは、雲泥の差だ。昨年の日本選手権10000mで13位と躍進し、11月の八王子ロングディスタンスで28分08秒52をマークして注目されるようになり、マラソンで同じ舞台に立つ資格を得た。
 マラソンで結果を出したが、スピード主体のトレーニングを行ってきたのはトーエネックの他の選手たちと同じ。今回のマラソンの準備期間においても、マラソン練習定番の40km走は1回しか行わなかった。
 その理由、経緯を松浦監督は次のように話す。
「初マラソンだった昨年のびわ湖(2時間23分13秒)は、本人の一度出てみたいという希望で出場しましたが、付け焼き刃的な練習でした。2度目の8月の北海道(2時間28分25秒)は、夏場の走り込みを兼ねての出場でしたが、そこそこ練習もしていてどちらに転ぶかわかりませんでしたが、ダメな方に出てしまった。でも、その後は月に1回は30km走を行うようにしました。トラック練習も並行して行って、スピードは落とさないようにしています。30km走はペースを決めず、自分のリズムで走りますね。30km走の翌朝に100分から120分動きます(ジョッグに近いゆっくりした走り)が、それが40km走代わりと言えるかもしれません。400 mのインターバルのタイムは、今回のマラソン前も、11月に28分08秒52で走った時と変わりませんでした。トーエネックのスタイルで、スピードを殺さないでマラソンを戦えないか考えて来て、最初に結果を出したのが河合です」
 35km以降で大きくペースダウンした課題は残ったが、トップ集団に追いついた30~35kmは15分09秒と全選手中最速だった。スピード主体のトレーニングで、マラソンをどう攻略するか。今後に注目すべき選手が現れた。

 河合はドーハ世界陸上に出場意向で、代表に選ばれた場合はMGCには出場しない。
「今の河合の力と経験値では、MGCで勝負をするのは厳しいと思います。もし五輪代表入りしても、初の日の丸で東京五輪を走れるほど甘くはないでしょう。もしも行けるなら世界陸上を走り、その経験を2021年以降に生かしたい」(松浦監督)
 世界陸上を優先する考え方は、川内と同じである。
 そのこととイコールではないが、坂口五輪コーチはMGC出場資格者30人の顔ぶれについて、次のように話している。
「スピード型の選手もいれば、スタミナ型の選手もいる。実力者だなと思える選手もしっかり入ったし、学生も頑張って入りました。多様性が面白いと感じています」
 東京五輪開催とMGCシリーズの実施で、男子マラソンの人材が次々に育っている。

写真:森田直樹/アフロスポーツ
写真:松尾/アフロスポーツ

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