【MGC マラソングランドチャンピオンシップ9月開催】

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【MGC マラソングランドチャンピオンシップ9月開催】
《東京マラソン展望②》
思い切った走りもできるMGC出場権を持つ選手たち
中村と佐藤は2時間6分台に意欲。「MGCに向け強さを見せることが大事」(中村)

 東京マラソン(3月3日)の注目日本選手は、日本記録保持者の大迫傑(ナイキオレゴンプロジェクト)だけではない。前回日本人3位の木滑良(MHPS・27)、昨年のびわ湖とベルリンで日本人トップの中村匠吾(富士通・26)、トラックで3回の五輪&世界陸上代表経験のある佐藤悠基(日清食品グループ・32)――3人とも2時間8分台の自己記録を昨年出している。9月開催のMGC(マラソングランドチャンピオンシップ。東京五輪とほぼ同じコースで開催され、五輪代表が最低でも2人は決定する)出場資格を持ち、今回は明確な目的を持ってチャレンジができる点が共通点だ。記録的にも、中村と佐藤は2時間6分台に意欲を見せている。ペースメーカーは2時間4分30秒~2時間5分10秒を目指す第1と、2時間6分半~2時間7分台前半を目指す第2が設定される(ペースの正式決定はレース前日)。中村と佐藤は第1ペースメーカーにつき、大迫とともに世界トップ選手たちと同じ集団を走る可能性が大きい。

●練習に手応え十分の中村
「タイムは確実に2時間6分台を出したい」
 2月21日にアルバカーキ(米国の高地練習場所)から帰国した中村は、大きな手応えを感じている様子だった。
 初マラソンだった昨年のびわ湖は、暑さの中で日本人トップ(2時間10分51秒)をとってMGC出場権を獲得。9月のベルリンはペースメーカーが暴走したため単独で走る局面が多くなってしまったが、2時間08分16秒と日本トップレベルのタイムを出した。
「3回目でようやく、力を出し切るレースができると思います。真価が問われるマラソンになる」
 中村は富士通に入社して丸3年が経とうとしている選手。駒大時代には学生駅伝で大活躍したが、全体的に見れば距離を走ってスタミナをつける練習が多かったという。いつかはマラソンで、という気持ちは小さい頃から持っていたが、学生時代はマラソンに出場する力はないと判断。「マラソンで世界と戦うためにはスピードも必要」と、富士通入社後はスピード練習の割合を増やし、17年日本選手権は5000m3位と好成績を収めた。
 だが初マラソン前の練習では、40km走を行うとダメージが大きく、練習の継続性が今ひとつだった。
「今回は40km走を行っても、トラックを重点的にやっていた頃と変わらない質の高いメニューも行うことができました。びわ湖、ベルリンと先頭集団で勝負ができなかったので、東京は一番前の集団で行く予定です。練習してきたことを出せれば、30km以降で勝負できる。(自ら)仕掛けないと勝つことはありません。レースの流れを見て、勝負できると感じたら勝負していきたい」
 中村は2度目のベルリンの結果も、ワイルドカードでのMGC出場資格に相当した。2度のMGC資格相当の走りをしているのは、男子では大迫と中村、井上大仁(MHPS)の3人だけだ。十分に代表候補といえる成績を残しているが、MGC前にもう1レースを走る目的は何か。
「(東京に出場しないと)ベルリンから1年空いてしまいますから、どこかで感覚をつかむマラソンを走る必要があると思っていました。半年間隔にすることで、同じ流れを作りやすいと思いました。ベルリンでは3位と4位の違いも感じました。ワールド・マラソン・メジャースの表彰台に乗ることで、評価も違ってきます。MGCまで半年、強さを見せることが大事です」
 中村はMGC本番の戦いを有利にすることも意識して、東京マラソンを走る。

●万全ではない木滑が走る狙いは?
 2時間8分トリオのうち、木滑は万全の状態ではないという。大迫が日本記録を出した昨年のシカゴを木滑も走ったが、左カカトを痛めて30kmで途中棄権した。練習段階でも多少の不安はあったが、雨のコンディションで滑りやすい路面に対応できず、レース中に悪化させてしまった。
 ニューイヤー駅伝前に木滑を取材したときにはすでに、MGC前のマラソンを考えていた。
「シカゴが途中棄権だったので、もう1本走っておかないとMGCに良いイメージで臨めません。他の選手にも、強さを植え付けたいので」と、中村と同じ狙いを口にした。
 だが11月の九州実業団駅伝は、入社2年目以降の実業団駅伝では初めて欠場。元旦のニューイヤー駅伝も6区区間9位で、トップを旭化成に譲ってしまった。
 黒木純監督は東京マラソンを前に、木滑に期待している内容を次のように話した。
「記録的にはサブテン(2時間10分未満)です。状態の上がり方が遅いなか、どうまとめられるか。今回マラソンの形を作れば、次につながります。マラソンに対して良い感覚を作りたいですね」
 MGCに向けて、マラソンの実戦を利用して立て直す。世界と戦えればベストだが、きっちり走れることを示すだけでも効果はある。
 今大会出場選手中、木滑、福田穣(西鉄)、そして大塚祥平(九電工)と、九州の実業団チームの3人がMGC出場権を持っている(大迫、中村、佐藤を加えた計6人)。
 福田はこれまで、超ハイペースのマラソンの経験がない。「東京はレベルが高い。どこまで行けるか、ガンガン挑戦してみたい」と、高いレベルの選手たちに思い切り当たっていく。そこで強さを示せば、MGCに向けてもアピールできる。
 大塚も別大と北海道などで好成績を挙げてきたが、まだハイペースのマラソンで勝負を挑んだ経験がない。九電工・片渕博文監督は「強い選手と力比べをさせておきたい」と、東京出場の理由を説明した。
 最後まで世界トップ選手たちと競り合うことは難しいかもしれないが、どこで先頭集団から離れるなどの決断をするか。冒険もできるが、MGCで対戦する選手たちに(粘り)強さを見せておくことも重要だ。

●試行錯誤して到達した佐藤のマラソン練習とは?
 佐藤も中村と同じように、「2時間6分台」を記録的な目標に掲げる。昨年9月のベルリンを走っているのも、中村との共通点だ。
「1年前の東京が2時間8分台で、ベルリンは2時間9分台でしたが、ペースメーカーが機能しなかった。内容的には2時間7分台もあり得たレースでした。今は東京で2時間6分台を視野にトレーニングをしています」
 昨年12月のニューイヤー駅伝用の取材時に、佐藤は上記のように話していた。
 中村との違いは、トラックの代表経験があることと、逆にマラソン進出後になかなか結果を出せなかったことだ。
 マラソン練習も対照的と言っていい。
 中村は日本の伝統的な練習スタイルを踏襲した。だが、それをやり切るには体力はもちろん、強い意思で取り組む必要があり、“よくある練習”で片付けることはできない。それに対し佐藤は、すぐに成功しなかったこともあって試行錯誤を繰り返し、新しいマラソン練習のスタイルを確立しつつある。
 例えば中村は、主に徳之島で練習した1月には、「40km走の本数を重ねて、月間1000kmちょっと」を走った。2月のアルバカーキ合宿では、「インターバルなど質の高い練習でスピードのキレを出す」ことが目的だった。
 一方の佐藤は、「マラソンの3週間前に一度、完全に疲労を抜く」と、珍しい調整法をとっている(女子のスピードランナーで、似た練習をしている選手もいたかもしれない)。
「直前に疲労を抜く方法では、疲労が残ってしまうこともあります。3週間前に一度疲労を抜ききって、本番が近づく中で30km走、40km走をやっていけば、距離への不安も疲労への不安もない。体調が上がってくるところでマラソンを走ることができるんです」
 得意としてきた種目も成長過程も違う中村と佐藤が、それぞれのマラソン練習を行い、過去2レースで結果を出し始めている。昨年の東京マラソンで設楽悠太(Honda)と井上大仁(MHPS)が、史上初めて同一レースで2時間6分台を2人が記録した。中村と佐藤が今年、続くことができるだろうか。

TEXT Photos by 寺田辰朗

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